脊髄反射

布団の中で目が覚めて

今見ていた夢を思い浮かべてみる

夢は本能的な欲望の表れだと

フロイトが言っているけれど

本当は全然そうじゃなくて

ゴミ箱の中のようなものかもしれない

 

今日は何もやることがなくて

生きのばすため散歩に行く

歩きながら小石を蹴ったり

遠くの国で起きているらしい

戦争の話をちょっと思い出して

家についたから忘れてみる

 

そういえば いつか

全部消えてなくなるらしい

お爺ちゃんもお婆ちゃんも

お母さんもお父さんも

私も妹も弟もみんな

死んで燃えて灰になるらしい

 

間違いなく訪れるその未来が

ちょうどあの遠くの国だけで

起こっている出来事のように

私たちはそうじゃないというていで

息を吸っている 吐いている

テーブルでごはんを食べている

 

ごはんをずっと食べないなんて

私にはできないけれど

いつもほんのちょっとだけ

生まれてきたくなかったし

ごはんを食べた分だけ

元気になるなんてことはない

 

動物みたいに脊髄反射だけで

人生が始まり終わっていたのなら

そんなことも考えずに済んだのだろう